夏目雅子

 一人目。夏目雅子さん。今月の11日が忌日だった(この頃歌人俳人の忌日ばかり調べている気がする)。夏目雅子さんの俳号は「海童」、ひまわりが大好きだったといい、その遺志を継いで作られた基金も「夏目雅子ひまわり基金」という。癌治療で脱毛してしまった方にカツラを無償貸与する活動をしている。


間断の音なき空に星花火 
(遺句)   
結婚は夢の続きやひな祭り
時雨てよ足元が歪むほどに
ぬぐってもぬぐっても汗みどろ
水中花何想う水なのか
折れている月見草の花情人(いろ)変り
蟻ん子手の平にのせ我侘しむ
聖夜吉凶の星か兆の星か
屋台まで讃美歌きこゆ聖夜かな
野蒜(のびる)摘む老婆の爪のひび割れて
セーターの始めての赤灯に揺れて
夕暮れに芝焼き燃える天を見つ
梅酒たいらげ梅をかじって舌づつみ
寒空に赤い火は有り難い
ゴーゴーってる流氷の音床の中
叩いても叩いても咳(しはぶ)いて壊れた
 遺句にはエピソードが残っている。病室から神宮の花火をご主人と見ているのだけれども、感染防止のために密閉された病室であり、花火の音が聞こえない状況だったそうだ。亡くなる1ヶ月前のことで、星花火は夏目さんの造語。写真集の題名にもなっている。