土佐日記

紀貫之が60代のときに、最後のご奉公(土佐国司)からの帰京道中を書いた日記風のフィクションが「土佐日記」です。彼は、京から連れて行った5才くらいの娘を土佐で亡くしました。
土佐日記は、この亡くなった娘への想いが小説全体に流れている点、そして紀貫之本人が書いたのではなく、女官が書いたとしている点が大きな特徴です。

いくらフィクションとはいえ、亡くなった娘を想う想いを語る場面は胸に迫るものがあります。娘が亡くなったのもフィクションという評論家もあるようですが、読み通してみると実際に子を亡くした父親でなければ思いつかない箇所が数多く見られます。

想いは時代を超えて共通でした。

土佐日記には、娘を想って詠んだ歌が9首掲載されています。和歌の名人なので、流麗な歌ばかりですが、どれも悲しい。
どの歌もそれぞれ意味があるのですが、私には◎をつけたものが特に印象に残りました。