学校を守るには

vinykiki2006-04-08

米国では、主にけん銃による重大殺傷事件が多く発生・報道されて、「学校テロ」などと言われているが、発生件数を見ると必ずしも学校の重大な暴力犯罪が多いわけではない。

  • 学校は刑務所並みがよいか

米国のKoch犯罪研究所が米国の公立学校と刑務所のセキュリティの類似点を論じた論文を公表し、学校と刑務所にはセキュリティ上の類似点があることを指摘している。

わが国でも学校への侵入事件が起きて以来、監視カメラの設置、門扉の閉鎖などのセキュリティ対策が講じられ、これまでの開かれた学校から学校の閉鎖へ方向転換する動きが見られるが、確かに外部からの攻撃に対しては効果があるが、学校暴力全体の解決策にはなり得ないだろう。

ドイツでは、多くの州で「反暴力ネットワーク」が確立し、学校の他に、自治体当局、青少年支援当局、警察、司法当局、青少年福祉事務所、少年裁判所、地域の職業安定所などが参加し、反暴力を推進している。このように開かれた学校のまま、地域社会全体で学校を守るという考え方を取り入れた企画・計画・設計原則を防犯環境設計という。

防犯環境設計は、「建物や街路の物理的環境の設計や再設計を通じて、地域の安全性を向上させたり、犯罪に対する恐怖を取り除いたり、犯罪を助長する要因を除去したりするもの」と定義される。防犯環境設計の基本原則は次の4つにまとめられる。

  • 監視性の確保

不審者や不審な行動を見極める。

  • 領域性の強化

住民に交流、警戒、不審者の監視を促して、部外者が侵入しにくい環境をつくる。

  • 接近の制御

犯罪者の動きを限定し、接近を妨げる。

  • 被害対象の強化、回避

出入口や窓の錠や扉、ガラスなどを強化し、施設などへの侵入を防ぐ。この部分だけを実施する方法が学校の「刑務所」化である

わが国では今のところ集合住宅のみの設計指針しかないが、地域社会の中で学校を守ろうとするときにはこの防犯環境設計の考え方を学校防犯にも取り入れるべきである。

このうち、わが国でも徐々に採用されてきた「訪問客登録制度」は「接近の制御」対策のひとつであるが、集団で学校施設を利用する場合だけを管理するわが国のやり方と異なり、欧米各国では生徒、教職員以外のすべての出入りを監視する基本方針をもっているように思われる。わが国でも安易に学校開放を中止するのではなく、逆に地域に学校開放を一層すすめ、学校安全の確保にも参加してもらう施策を推進することが今、望まれているのではないだろうか。